バスの中での出来事(1)
私が20代前半(お肌がツルツルの頃)の時の話です。
その頃、まだ車の免許を持っていなかった私は、よく市営バスを利用していました。
どのバスにも『愛の優先席』という、お年寄りや障がいを持っている人のための席が、乗車
口のすぐ左の方に設置してありました。その座席の窓には、大きな赤い文字で【愛の優先
席】と書かれたステッカーが貼ってありました。
その日、私は天文館(鹿児島市内の繁華街)に買い物に出かけ、帰りに市営バスに乗りま
した。あいにく乗客が多く(休みの日でしたから当たり前ですが)、座れる席は【愛の優先席】
だけでした。私は生まれつきの脳性小児マヒで、訓練により小学校2年生の頃に歩けるよう
になったものの、歩き方は《ヒョコタン、ヒョコタン》としています。で、当然のごとく【愛の優先
席】に座りました。
次のバス停で止まった時、70歳くらいのおじいちゃんが同じバスに乗ってきました。
そして、私の横に立つといきなり、
「君はぁー、これを見て座ったのかぁーー」
と、バスの中に響き渡る大声で怒鳴り、窓に貼られた【愛の優先席】のステッカーを指差した
のです。
あまりにも突然の出来事にパニくった私は、「私、足が悪いんです」とも言えず、その場で
スッと立ち上がってしまいました。そして次の停留所で降りました。
私が立ち上がった時、「あっ…」という驚きの声をあげたおじいちゃん。よほど疲れていて
座りたかったのでしょうね。バスに乗れば、【愛の優先席】があるから…と思って乗ってみた
ら、どうもなさそうな若い小娘が座っている。許せなかったのでしょう(・_・;) でも、私のあとの
座り心地はきっと悪かったことでしょう。
その日以来、私はなるべく『愛の優先席』には座らないようにしました。
でも、今だったら、
「すみません。私、足が悪いんですぅー」
と言えるでしょうね。きっと!
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